夏といえば、ドローン撮影にぴったりな季節。抜けるような青空、鮮やかな緑、そして夕暮れのオレンジのグラデーションなど、夏ならではの美しい景色を空撮に収めたいという人も多いはずです。
しかし、見落としがちなのが「暑さ対策」。気温が高い中での長時間の屋外作業は、操縦者にも機材にも想像以上のダメージを与えます。
特に近年の日本の猛暑は過酷を極め、熱中症による救急搬送や、電子機器のオーバーヒートといったトラブルも珍しくありません。
この記事では、ドローン操縦者が夏場に安全・快適に飛行を行うための「暑さ対策グッズ」と「実用的な知恵」を、操縦者向け・機材向けの2つの視点からご紹介します。初心者から業務用フライトまで幅広く対応できる内容になっていますので、ぜひ参考にしてください。
夏の屋外飛行で直面する主な課題
熱中症のリスク
ドローンの操作は意外と「動かない作業」です。直射日光の下でじっと立ち続け、集中力を切らさずに操作を続けることで、思った以上に体温が上がります。
しかも、モニターやゴーグルを覗き込んでいると、周囲の変化に気づきにくく、水分補給を忘れてしまいがち。
気がついたときには「めまい」「吐き気」「頭痛」など熱中症の初期症状が出ていた、というケースも多いのです。
機材トラブル(バッテリーの膨張・オーバーヒート)
ドローンに使用されているリポバッテリーは高温に弱く、外気温が30度を超えるような日には急激に発熱します。
過度な熱を持ったバッテリーは、膨張や発火のリスクもあり、大変危険です。特にFPVドローンのような高負荷のフライトを行う場合は要注意です。
集中力の低下と事故のリスク
暑さで集中力が低下すると、操作ミスや判断の遅れが生じやすくなります。GPSモード付きの空撮ドローンであっても、風や障害物の多いエリアでは操作の正確さが求められます。
万が一、機材をクラッシュさせてしまえば、撮影中止はもちろん、機材の修理や交換で大きな出費になることも。
操縦者向けの暑さ対策グッズ【装備編】
ここからは、操縦者が「熱中症にならない」「集中力を維持する」ための暑さ対策グッズを紹介します。
(1)冷感インナー・空調服
猛暑の屋外作業には「冷感インナー(接触冷感素材)」が欠かせません。ユニクロの「エアリズム」やワークマンの「ICE ASSIST」シリーズなどが人気です。
さらに本格的な対策をしたい場合は「空調服」がおすすめ。ファン付きで空気を循環させ、汗を蒸発させながら体温を下げてくれます。ドローン業者の中にも導入している人が多いです。
(2)ネッククーラー&携帯扇風機
最近では首に巻くだけで冷却効果を得られる「ペルチェ素子型のネッククーラー」も普及してきました。例えばサンコーの「ネッククーラーPro」はUSBで稼働し、風のない炎天下でもしっかり冷却してくれます。
手持ちの携帯扇風機もあると便利で、スマホ用バッテリーと兼用できるモデルもおすすめです。
(3)帽子・サングラス・日焼け止め
帽子は「風で飛ばされにくい」タイプを選びましょう。あご紐付きのハットタイプや登山用キャップが定番です。
また、モニターを見る時間が長い場合は偏光グラスを使うことで、液晶の反射を抑えて目の疲れを軽減できます。日焼け止めはSPF50+・PA++++クラスのものを使い、2〜3時間ごとに塗り直すのが効果的です。
操縦者向けの暑さ対策グッズ【行動編】
(1)こまめな水分と塩分補給
「のどが渇いたと感じたときには、すでに脱水が始まっている」とも言われています。
水だけでなく、汗で失われた塩分や電解質を補えるスポーツドリンクや経口補水液(OS-1など)を常備しましょう。塩分タブレットや塩キャラメルなどもおすすめです。
(2)日陰の確保(ポップアップテント・タープ)
都市部の公園や郊外の原っぱでは日陰がないことも多いですが、最近ではワンタッチで設営できるポップアップテントや簡易タープが軽量・コンパクトになっています。
操縦エリア近くに設置して、バッテリー交換やモニター確認を涼しい場所で行えると、体力の消耗を抑えられます。
ドローン&機材向けの暑さ対策グッズ
(1)保冷バッグ・断熱ケース
使用済みのリポバッテリーは高温になっています。そのまま車内や地面に放置すると、さらに温度が上昇し危険です。
小型の保冷バッグに保冷剤を入れておき、使用前後のバッテリーを一時保管することで過熱を防止できます。
リチウム系バッテリーは「0℃〜45℃」の範囲が理想的です。
(2)赤外線温度計でバッテリー温度をチェック
Amazonなどで2,000円前後で購入できる「非接触型の温度計(サーマルガン)」を使えば、バッテリーやESC、モーターの温度を簡単にチェックできます。
飛行前に「すでにバッテリーが熱くなっていないか」を確認するクセをつけましょう。
(3)地面からの熱を遮断する着陸パッド
地面が熱くなると、プロペラが巻き上げる風で地表の熱が機体に影響します。加えて、砂や草がモーターやジンバルに入り込む原因にも。
ドローン専用の着陸パッド(折りたたみ式や丸型のもの)を使うと、安定した離着陸ができ、機体の熱保護にもつながります。
実体験ベースのワンポイントアドバイス
筆者が実際に猛暑の現場で体験したトラブルや、その対処法をご紹介します。
•日陰がなくてバッテリーが触れないほど熱くなった
→ポータブルの「遮光カバー」を持参し、離着陸場所に影を作るようにしてからは快適になりました。
•集中しすぎて水分を忘れ、頭痛に…
→Apple Watchに「30分ごとにアラート」を設定。今では自然と水分補給のタイミングを体が覚えています。
•炎天下で飛ばしてクラッシュ
→頭がボーッとして、距離感を誤ってしまいました。それ以来、「午前中か夕方の2時間」に絞って飛行するようにしています。
まとめ:暑さ対策こそ、安全と映像美の鍵!
夏のドローンフライトは、絶好の空撮チャンスです。しかし、暑さを甘く見ると、健康被害や機材損傷といった大きなリスクを伴います。
今回ご紹介した暑さ対策グッズや行動のポイントを活用すれば、過酷な環境下でも安全かつ快適にフライトを楽しむことができます。
**「暑さ対策もドローンの準備の一部」**と捉え、映像も操縦者も万全の状態で、最高の空を飛ばしましょう!