東南アジアに位置し、タイ、ラオス、ベトナムと国境を接するカンボジア。首都はプノンペン、公用語はクメール語ですが、観光地では英語も広く使われており、アンコールワットを代表とする観光名所を有する親日国でもあります。

そんなカンボジアで、近年、ドローンに関する規制が大幅に強化されました。その背景には、フン・セン前首相へのドローンを利用した襲撃計画があったとされています。この事件を契機に、社会の安全確保と公共秩序の維持を目的として、2024年2月14日に省令が公示され、即日施行されたことから、カンボジアにおけるドローン規制は一気に厳しくなりました。

規制強化の内容

新たな規制には、ドローンのモデル情報や飛行計画の事前提出、操縦者の年齢制限、飛行時間や高度の制限などが含まれます。具体的には、以下のような内容が定められました。

  • 登録対象: 国防や安全保障の目的で使用されるドローンを除き、積載量2キログラム以上のものは登録の対象
  • 操縦者: 操縦者は18歳以上
  • 飛行時間: 午前6時から午後6時までの間のみの飛行
  • 同時飛行: 同時に4機以上のドローンの飛行の禁止
  • 飛行禁止区域: 王宮、アンコールリゾート、国際機関や国の施設、病院、学校など

これらの規制は、カンボジア内務省で閲覧可能ですが、当然ながらクメール語で記載されています。

規制強化前の状況

規制強化以前は、カンボジアではドローンに関する規制がほぼないような状況でした。首都プノンペンやシェムリアップのアンコールワット周辺以外では、特に規制されているような情報もありませんでした。

実際に、筆者もカンボジアで現地警察官にドローンを飛ばせる場所を尋ねたところ、「アンコールワットとか王宮の近くとかはダメだけど、他はいいですよ!」と、お国柄のような感じで回答されたほどです。首都プノンペンでも同様に尋ねたところ、「いいですよ!」とあっさり返事が返ってきました。

もちろん、これは日本人だからOKと言ったのか、あるいは単なる誤解だったのかは定かではありません。

規制強化の背景にある事件

しかし、このような状況が一変したのは、フン・セン前首相へのドローンを利用した襲撃計画があったとされる事件がきっかけでした。この事件を国が相当深刻に受け止めたため、一気に規制強化へと舵を切ったと考えられます。

規制強化による影響

今回の規制強化は、カンボジアのドローン愛好家や観光客に大きな影響を与える可能性があります。特に、アンコールワットなどの観光名所でのドローン撮影を楽しみにしていた観光客にとっては、残念なニュースと言えるでしょう。

しかし、一方で、今回の規制強化は、カンボジアの安全保障を強化するための重要な措置であるとも言えます。ドローンによるテロや犯罪を未然に防ぐためには、一定の規制は必要不可欠です。

今後の展望

カンボジア政府は、今回の規制強化によって、ドローンによる安全上のリスクを低減し、国民の安全を確保したいと考えています。今後は、規制の運用状況を見ながら、必要に応じて見直しを行う可能性もあります。

また、ドローン技術の発展に伴い、新たな規制が導入される可能性もあります。ドローン愛好家や観光客は、常に最新の情報を確認するようにしましょう。

カンボジアのドローン規制から学ぶこと

今回のカンボジアのドローン規制強化は、ドローン技術の発展と安全保障のバランスをどのように取るかという、世界共通の課題を浮き彫りにしました。

ドローンは、私たちの生活を豊かにする可能性を秘めた技術ですが、同時に、悪用されるリスクも抱えています。各国は、ドローン技術の発展を促進しながら、安全保障を確保するための適切な規制を模索する必要があります。

今回のカンボジアの事例は、その一つの試みとして、私たちに多くの示唆を与えてくれるでしょう。

カンボジアへの渡航を検討している方へ

カンボジアへの渡航を検討している方は、渡航前に必ず最新のドローン規制を確認するようにしましょう。規制に違反した場合、罰則が科せられる可能性があります。

また、ドローンを飛行させる際には、現地の法律や規制を遵守し、安全に飛行させるように心がけましょう。

まとめ

カンボジアのドローン規制強化は、国家の安全保障と観光への影響という、相反する要素をどのように両立させるかという難しい課題を私たちに投げかけています。今回の事例は、今後のドローン規制のあり方を考える上で、貴重な教訓となるでしょう。

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